最優秀賞2年連続受賞の快挙…300台超えの痛車が魅せる「E.M.T.G in NAGARA 11」

CHIBANEW PROJECTは9月22日(日)、痛車イベント「E.M.T.G in NAGARA 11」を千葉県長生郡のロングウッドステーションで開催した。約300台の痛車が集まり、来場者の目を楽しませた。

本イベントは美少女ゲームの痛車の発展を主目的としているが、近年ではアニメや一般向けゲーム、VTuberなど幅広いジャンルを扱う「一般部門」も設けている。多くのゲームメーカーが出展・協賛する点も特徴だ。今回は最も優れた車両や編集部が気になった車両からピックアップする。

北の大地から2連覇、革新技法で魅せる <刹那にかける恋はなび・白銀メイ仕様>

最優秀賞を受賞したのは、北海道から参加したせるな氏。同氏は前回の「E.M.T.G in NAGARA 10」においてフェアレディで最優秀賞を受賞。今回も同様の成績を収め、2連覇を達成した。

 

今回初披露となった180SXは、美少女ゲーム「絆きらめく恋いろは」から「刹那にかける恋はなび」のキャラクターデザインに変更。2005年前後のスポーツカーコンセプトを踏襲しつつ、革新的な技法で進化を遂げている。

特筆すべきは、メッキシートを用いた表現方法だ。「キャラクターの部分のみに白インクを5%の濃度で打つことで、キャラクターがしっかり見えつつもメッキ感を残し、自然と浮き出るよう工夫した」とせるな氏は語る。さらに、キャラクターの服の発光部分や刀身には白インクを使用せず、光の反射を利用して擬似的な発光効果を生み出す技法を採用した。

内装にも細やかな配慮が見られる。キャラクターに合わせてパールブルーに変更し、ネオン色も同様にブルーとした。これにより、車両全体で統一感のある作品に仕上がっている。

2連覇達成について、せるな氏は「純粋に嬉しい。大好きなEMTGの歴史の中に、簡単に塗り替えることのできない爪痕を残せたことを誇りに思う」と喜びを語った。

今後の展望として、「北海道周辺の痛車乗りたちのサポートをメインにしつつ、自身は日本各地の未参加のイベントに少しずつ顔を出していきたい」と意欲を示した。

 

大人気シロコRに続け、シルビアで表現する“萌え”の真髄  <ブルーアーカイブ・久田イズナ仕様>


ブルーアーカイブ・砂狼シロコ仕様のGT-Rに乗るたいし氏が、新たに増車したシルビアS14でE.M.T.Gに参戦した。

たいし氏のもう1台の愛車「シロコR」

「ブルーアーカイブ」の久田イズナをモチーフにしたこの車両で、たいし氏は初めて関東の痛車イベントに参戦。「格好良さは当然として、そこに自身の愛情を込められるかが重要」と語る。

たいし氏の制作philosophy(哲学)は独特。「キャラクターをいかに噛み砕いて痛車に落とし込むか」を重視し、デザイナーとの綿密な打ち合わせを経て作品を完成させる。「車1台の塊として作品を表現する」という姿勢は、かつて目にした犬丸氏のRX-8(アイドルマスター シンデレラガールズ・渋谷凛仕様)から影響を受けたという。

注目したいのはたいし氏の痛車製作に対する姿勢だ。「自己満足の中で作っていて、結果として評価されることが嬉しい」と語る。その真髄は「かっこよさの中に気持ち悪さを入れること」。「かっこいいだけの痛車は作りやすいけど、気持ち悪さこそがキャラクターへの愛」と力説する。フロントガラスに貼られた「イズナと主殿」の相合い傘がその現れだ。

この価値観は、痛車文化の新たな潮流を示唆している。たいし氏は「若い世代に痛車文化を継承したい」と願う。実際、免許を持たない若者たちが「自分も作ってみたい」とたいし氏のもとを訪れるという。

痛車文化は、「痛々しい」車体から、キャラクターへの深い愛情と独自の美学を表現する芸術へと進化を遂げつつある。たいし氏の作品は、その最前線を走っていると言えるだろう。

バーチャルな任務車両、リアルな街を疾走 <ブルーアーカイブ・空井サキ仕様>


続いてこちらもスマホゲーム「ブルーアーカイブ」から「空井サキ」仕様だ。ベース車両は日産のNV150AD。オーナーはアカハラ氏。2月に車両を購入し、3月3日に施工を完了。この日が「うさぎの日」だったのも、キャラクターにちなんだ粋な計らいといえよう。

デザインのテーマは「実在性」。サキの「規範通り」な性格設定を反映し、直線的なデザインを採用。ゲーム内に登場するSRT特殊学園のヘリコプターのカラーリングをベースに、キャラクターの硬派な印象と商用バンの無骨さを融合させた。

車体の左右で異なる衣装のサキを配置したのも特徴的だ。歩道から見える右側面には通常衣装、左側面には水着姿を採用。「艦艇の乗下船は左舷から」という設定を踏まえた遊び心だという。

色彩へのこだわりも強く、オーナーは都内の顔料専門店で屋外でも映える青を厳選。キャラクターの塗りは「アニメ塗り調」とし、UV印刷でアウトラインをくっきりと表現した。

細部にも遊び心が光る。最大積載表示にはゲーム内イベントにちなんだ「エビ450kg」の文字が……。

オーナー提供画像

オーナーは「はじめての痛車デザイン」と自負する。「好きなキャラクターを貼るに当たって、一目惚れした日から1年後にも『好き』と思っていなかったら貼っていなかった」と語り、キャラクターへの愛着の深さをうかがわせる。

作品世界観を保ちつつ独自の解釈を加えたこの痛車。街を走れば、アニメファンはもちろん、そうでない人の目をも引きつけることだろう。

白黒の世界に咲く桜 ーモノトーンが魅せる大人の痛車 <タユタマ・泉戸ましろ仕様>


企業ブースで見つけた、『タユタマ』の泉戸ましろ仕様のレクサスRC。オーナーは滋賀県の奥伊吹モーターパークで「ARCC information」を運営するAtsu氏だ。イベント当日は、コスプレイヤーの大川あまねさんも参加。キャラクターの世界観を立体的に表現し、来場者を魅了した。

白を基調とした車体にモノトーンのステッカーを配し、控えめながらもおしゃれな仕上がりが目を引く。Atsu氏は「シンプルで格好良い」をぶれないコンセプトに掲げ、スタンス系のテイストを取り入れている。

痛車歴は15年以上に及び、2008年から2018年まで初代の車オデッセイRB1で同キャラクターの痛車を製作。現在のRCに乗り換えてからは4年間の試行錯誤を経て、原点回帰を果たした。

こだわりのポイントは細部に宿る。「桜吹雪の中、キャラクターの顔にフォーカスを合わせてF2.8で写真を撮った」をイメージに、桜の花びらにボカシを入れたり、服の柄と同じ形の花びらを散りばめたりと、繊細な表現にこだわる。

「痛車は全国の人とのつながりを作ってくれた感謝すべき存在」とAtsu氏。さらに「ARCChampionshipを始めるきっかけにもなった」と語り、痛車が単なる趣味の域を超え、新たなコミュニティ形成の核となっていることを示唆した。

 

文:アオニン
写真:成田白、アオニン
協力:CHIBANEW PROJECT

 

 

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