文:アオニン
写真:RISKY

最優秀賞を獲得したSateKelinci369さん(@Reitai)
9月13日(土)、インドネシア西ジャワ州バンドン県のSabilulungan Domeで開催された「ITASHA DOMEI 2025」。インドネシア初となる痛車専門イベントを痛車ビジョンが現地取材した。西ジャワ、ジャカルタ、さらには約1,000km離れたスマトラ島からも駆けつけ、多数の痛車と痛単車(バイク)が一堂に会したその模様をお伝えする。
主催者によると、長年にわたって日本の痛車イベントにインスパイアされ続けてきたという。「インドネシアの痛車文化の存在を世界に示す絶好の機会」と位置づけており、参加者の多様な創造性と団結力を目の当たりにしたと振り返る。
「落ち着いた」デザインが特徴
多くの痛車が日本の痛車文化と同様のスタイルを踏襲していた。多彩なアニメキャラクターを車体に描いた作品が目立ち、主催者は「多くの痛車オーナーは日本を手本としている」と語る。一方で「より落ち着いた印象で、時には可愛らしいデザインも見られる」とインドネシアならではの特色も説明した。
興味深いのは、多くのオーナーが年に1回以上、時には年2回以上という高い頻度でデザインを変更する点だ。「より良く、格好良く、新鮮に見せたい」という意識が強いという。
規制の壁、バイクに活路
車両改造の傾向は、インドネシア独特の事情が色濃く反映されている。主催者は「アフターマーケット製品の輸入が困難で、国内にもそうした産業が少ないため、車の改造は非常に高額になる」と説明する。こうした制約により、多くの痛車はホイール交換程度の改造にとどまる一方、制約がある中でも大幅にカスタマイズされた車両が数多く参加していた。
一方、バイクは事情が異なる。「インドネシアではバイクのコストが車よりもはるかに安く、国内のアフターマーケット産業も発達している」ため、大幅なカスタマイズが可能だという。実際、インドネシアでは痛車よりも痛単車の人口の方が多いと話す。
展示方法では、日本の展示スタイルを参考にしたのか、バイクの背景に大型のキャラクターバナーを設置し、フィギュアとともに演出する参加者も見られた。日本では見慣れた展示手法だが、海外で目にすると新鮮な印象を受ける。
人気キャラクターの傾向
現在人気のキャラクターは「ホロライブ」およびインドネシア支部の「ホロライブID」、さらに「原神」「アズールレーン」「鳴潮」といった中国系ゲームのキャラクターだという。主催者は「この傾向は毎年、人気のアニメやゲームに応じて変化する」と説明する。
参加者の年齢層は17歳から35歳が中心で、日本の痛車文化とほぼ同様の世代が支えている。
次回開催に期待
イベント終了後、参加者からは「来年も開催されるのか」という問い合わせが相次いだという。遠方のスマトラ島からも参加者が駆けつけるなど、初回イベントとしては大きな成功を収めた。
東南アジアで着実に根付く痛車文化。インドネシア独自の進化は、グローバル化する日本のポップカルチャーの新たな展開を示している。